峻空会トップページ > 特番 > 第50回内閣総理大臣杯争奪全国大会


7月8日、東京武道館で行われた第50回の全国大会決勝は、今年から内閣総理大臣杯の冠を頂き、そのうえ昼の時間に世界的バイオリン奏者として名をはせる 五島 龍 の生演奏が聴けるとあって例年に無く盛大に行われ、日ごろ選手や役員の家族ながら空手には縁遠く武道館まで足を運ぶことの無い方々も大挙して観戦し二階、三階席までの会場を埋め盛り上がりを見せる大会となった。
試合は男女 形、組手に活躍する駒澤勢の指定選手に加え、あちらこちらのコート上に各地を代表する選手として卒業生と現役学生が出場し会場を沸かしてくれた。




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昨年の同大会で頂点に立った栗原は8月のシドニーでの世界大会を制したあと、益々の磨きがかかった力強さと正確さで他を圧倒する栗原の形「壮鎮」は得点で40.30と二位に一点以上の差を付けまさに比類なき強さで大会を連覇した。
合わせて嬉しいのは栗原と言うとこれまで形のスペシャリストの感が否めなかったが、なんと今年は一皮、いや二皮むけて組手においても堂々の三位入賞、見事に総合優勝を成し遂げた。
総合優勝の深紅の優勝旗と総理大臣杯は中原会長から栗原の手中に
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昨年のオーストラリア世界大会同様に斉藤が栗原に続く堂々の二位を確保した。
武道館を沸かせた往年の高橋良昌師範の力強く尚且つドラマチックな 雲手 とは又一味違いをみせる斉藤の 形 は演技力も加わった魅力で観る者を形の中に引き込む。
現在の空手界、形においては栗原、斉藤の駒澤コンビが群を抜いて他を圧していると言えそうだ。

いまや表彰台がすっかり板に付いた斉藤祐樹
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昨年の世界大会で並みに乗り切れない日本チームの中、一人気を吐き優勝にまでチームを導いた杉山、今大会は優勝候補の筆頭とも期待された。
大学では正式に監督を任され後輩の指導に力を注ぐも、多忙を極める仕事で自らの稽古時間の確保さえままならぬ中での努力が大いに実ったと言える。
安定した実力で勝ち進んだ杉山は準決勝で協会指導員を退け、過去数度の優勝を収めてきた古参谷山選手との決勝戦は先取りした後に蹴、突を受けて流血し次第に体力が奪われたようだ。
今春結婚した新妻 真弓(平成13年卒、旧姓金古)の悲痛なる叫びの中、受けた中段蹴りの影響もあったのかしだいに動きも鈍り勝利は叶わなかったが、これまでの最高位タイの準優勝は、右まぶたに受けた痛々しい大きな傷跡と共に今月21日に行われる自身の結婚披露宴で空手家の勲章として大いに会場をわかす事になるだろう。

後輩たちに駒澤魂を見せた杉山俊輔
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昨年のオーストラリア世界大会、応援ツアーに出かけた我々にとって忘れられぬ事が起きてしまった。
シドニーに着いた翌日の大会初日、応援に行ったはずの我々は「まさか予選はいいだろう」と多寡をくくって試合会場には行かず観光に出かけてしまった。
雄大なこの国の自然を満喫してホテルに戻と、フロントで偶然に出くわした奥家の母親が悲痛な面持ちで一言。

「先輩たちが応援に来てくれなかったので一回戦で負けました」

このときの重苦しさと申し訳なさが今でも強く我々の心に残っている。
決勝戦の当日、奥家は団体戦のメンバーに入ることも無く一人地獄の淵にたたずむかのような姿は正視できぬほど憔悴していた。 
僅か2年前、相手を寄せ付けない見事なまでの強さで華々しく世界の頂点に登りつめたあの奥家が、敗北から一日たっても焦点の定まらぬ目で呆然としているその姿には掛ける声さえ見当たらなかったことを思い出す。

あれから一年ちかい月日が過ぎ、その後の奥家の心境の移り変わりがいかばかりか聞いてみたい心境に駆られた事もあったが、今年の大会初日、東京体育館で久しぶりに顔を見るとあの日の苦い思い出やそれ以後の心配などまったく不要なことが確信できたのは私だけでは無かったようだ。
すっかりシェイプアップして一回り小さくなった精悍な顔と、完全に取り戻した自信から来るのか穏やかな様子は二年前を遙かに上回る「優美なる戦士」の顔に戻っていた。

私自身の勝手ではあるが今年は大会での試合振りなどの報告はあえて止める事をお許し願いたい。

あえて言うなら大学を卒業したての21〜2歳だった女の子が世界に挑み、頂点に立つことから始まる心の中の葛藤は我々には計り知れない程に大きくそして重いものなのだろう。
辛酸をなめ、どん底を這いずりながらも必ず蘇える事を信じて過ごすこの間の時間は、彼女にとって長いのか、それとも短く感じるものなのかさえ分からないが、自らが選択したプロとして置かれている立場を認識しなおし、勝利する事のみに焦点を絞りひた向きに前に前にと歩を進めたことだろうし、結果、機を待って目的を成し遂げ二度目の「桧舞台」でいっそ色合い増し深みある名画になった奥家沙都美に心から拍手を送りたい。


第一回の総理大臣杯を見事手中にしたSatomi Okuie
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駒大の誇り 男子総合優勝の栗原一晃  女子組手 奥家沙都美
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男子:形、組手共に優勝
男子組手は主力選手3人を怪我で欠く厳しい状況の中で「ならば俺が」の意気込みを持った頼もしい選手たちで優勝をなしとげた、形に至っては平成4年以来14連勝中。

女子:形、組手共に準優勝
いま一歩の頑張りと、1.2年生の中から普段の稽古中からより強い自己アピール出て来る者のあることに期待したい。


試合中の写真は仙台在住のプロカメラマン 「舞嶽公敬 氏」の提供です

第50回 内閣総理大臣杯争奪全国大会 観戦記 完
  
N.Y


駒澤大学空手道部 峻空会
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