峻空会トップページ > 特番 > 第48回全国空手道選手権大会の報告




和45年以来の完全復活を果たした昨年の全国大会から一年、選手それぞれが心に期して向えた第48回全国空手道選手権大会が7月9(東京体育館).10日(日本武道館)で行われた。
まだ記憶に新しい昨年の快挙が、今年は当然といった風に各クラスの試合が進み、全てが終了しての記念撮影の最前列には去年にも増してカップ、トロフィーがあふれ、今年の大会もまさに駒澤デーと呼ぶに相応しく個人戦、団体戦共に素晴らしい成果を挙げた。
なかでも個人形で現役4年生安藤郁真が昨年の世界チャンピオン指定の椎名選手を予選で退け決勝に進んだ事や、峻空会の女子チームが優勝候補の一角を2回戦で撃破するなど伝統の集中力を今年も忌憚なく見せてくれた。
それでは第48回大会を振り返って報告します。

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年の松涛杯を制し一躍世界にその実力を知らしめた奥家沙都美
それだけに今大会には「勝って当然」の重圧も決して少なくは無かったはず、まるで男の子のように切り詰められた彼女の髪型にそれが表れていた。
そんな奥家にあえて髪を切った理由を聞くと、すぐに返ってきた答えが「失恋です!」といたって屈託の無いものだった。
どうやら周りが胸締め付けられる様な思いで声援をおくる中、当の本人だけは明鏡止水の静けさの中に身をおいているかの様だった。
試合は初戦から全く相手を寄せ付けない一方的な力の差で勝ち進み、4回戦にきて西の実力者の一人、大阪代表の奥田選手との一戦をむかえ応援席にも徐々に緊張感が漂ってきた。
そんな中、「難無く」と言っては相手選手に失礼かとも思うがあえてそう書かせていただき次の準決勝に駒を進めた。
準決勝は今大会で初の指定選手同士の対決となる青山学院出身 新垣美沙子選手。
本部指導員、そして形、組手の両指定である新垣に負ける訳にはいかない奥家の顔に徐々に鋭い気が満ち溢れ、今大会では一番の攻防を見せたがそれでもまるで攻め込まれる事もないうちに新垣を退け最後の一戦を残すだけとなった。
決勝戦の相手は大正大学一年生の藤原菜希選手。
決勝を迎えて奥家の心の中に二つ程の思いが湧き上がったかもしれない。
その一つは決勝での対戦相手が彼女の読みと異なっていたのではないだろうか。
組み合わせの反対側には昨年の世界大会で互いに死力を尽くして戦ったあの大正大OG高橋優子がいた、しかし、その高橋を破って後輩の、それも一年生の藤原が勝ち進んできたのは予想の外ではなかっただろうか。
そして思いの二番目は、対戦相手の藤原は昨年の全空連個人組手を高校生にして手中に収め、今春鳴り物入りで大正大に入学した今年話題の一人でもあった。
言うなれば昨年の空手協会世界チャンピオン対全空連チャンピオンの構図となったのだ。


決勝の藤原戦

年の世界大会の後、桧舞台で繰り広げられた戦いの妙を少しでも克明に報告したいと力を振り絞った私だったが今回はなんとも書きようがなく悩んでいる。
何故なら試合開始からたった二枚の写真を撮る間に試合が終わってしまったからだ。
カメラ越に見ていた私も試合内容が知りたくて何人もの後輩たちに聞いたが「完勝です」の言葉と「特に二本目は完璧」の言葉しか返って来ず、書きたくともそれ以上のねたが無い。
唯一この大会で奥家沙都美の全試合を通して見えたもの、それは彼女の試合で一度も審判の旗が分かれなかった事と主審が副審を招集する事が無かった、の二点である。
他の全て、或いはほとんどの試合がそうであったように赤と白の旗が向かい合って同時に揚げられ、副審が呼ばれ、結局些か理解に苦しむ結果が出され会場が騒がしくなったり、「相打ち」や「どちらかが速いとか弱いとか」・・・
言うなれば審判泣かせの多い昨今、奥家だけが技を出せば全て決まり、審判間での議論の余地を見せなかったと言う事でこの事がどれほど素晴らしく、どれほど美しく、そしてどれほど桁外れに強かったかの証とは言えないだろうか。
そんな奥家の試合振りに歓喜する者、呆気に取られ者、そして会場のほとんどを埋める他大学の落胆する様は、かって師範大石の全盛時、今年こそはと意気込んで挑みながら敗れていった幾多の有力選手の応援団が途中で会場を後に立ち去っていった有力大学OBたちの姿が重ねて思い出された大会だった。

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乙女の黒髪をバッサリと切り落とした新たな境地は、来年の世界に向かって覇者の道を突き進む奥家沙都美の覚悟なのだろう凛とした美しさを湛えていた。
愛弟子の快挙に鬼と恐れられた師範の顔にも隠しきれない嬉しさが満ち溢れ、いささかギコチナイ右の手に師の人柄を感じるのは私だけだろうか。
桧舞台の第二弾  完





形 優勝の小林邦雄を挟んで左に栗原一晃、右に斉藤祐樹 駒澤勢が形を独占した
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年総合優勝を果たした小林邦雄が今年も見事な五十四歩小を演じて優勝をさらった。
力感に溢れる小林の形は 緩急 伸縮 強弱 を兼ね備え、正に空手道の本質でもあろう一撃必殺の力強さと無駄の無さを見せ付け他を圧倒した。
残念ながら組手は準々決勝で姿を消し、試合後に顔を合わせると彼の口から「すいません」の一言が出た。
「すいません・・・小林 何がすいませんだ、素晴らしく立派だった、感動したョ」
小林にこう返した。
球技種目など競技よっては40歳を超えてもなお一線で頑張る選手たちが大勢いるのは確かだ。
しかし、数ある競技の中でも最も過酷な一つと言える空手の組手試合では力、速さ、そして危険や恐怖に打ち勝つ心と気迫、他にも年齢からくる動体視力の衰えなど全ての人間に共通な自身の中に起こる変化とも戦わなくてはならない。
小林はこうも付け加えた。
「スピードや力はまだ何とかなりますが、勝負に対する気力の方が続かなくなってしまった」と。
この言葉を我々はよく耳にする、それも一応に一流選手の口からで、幾多の名横綱も同じ言葉を口にしていった。
無論ディフェンディング・チャンピョンとして小林は次の形試合も出場し、今年とはまた一味違った名人の境地を見せてくれると期待している、同時にこの域まで到達した空手家の、指導者としての今後にも大きな期待を持ちたいではないか、それは小林邦雄が今まさに駒澤が生んだ歴代の偉大な先輩空手家に肩を並べ掛けた証なのだ。

そして嬉しい事はまだまだ続きそうだ。
その小林に追いつけ追い越せと迫ったのが一段と磨きが掛かり気合と力の充実した 岩鶴 を演じ二位となった栗原一晃。
故高橋良昌が一世を風靡したあの絶品 雲手 の後継者になるであろう三位の斉藤祐樹の二人の活躍も見事であった。
これで来年からしばらくは栗原と斉藤、この二人が鎬を削りながら彼らの時代が続きそうだ。




大会、駒澤の力は幾つもの快挙を成し遂げた。
もちろん現役諸君の活躍で男子団体で組手、形の総合優勝や女子組手優勝、形の二位は他校であればこの上ない快挙であろうが、学生諸君には少し気の毒だが我が駒澤では当然と思う者も少なくないだろう。

快挙:1
そんな中で冒頭にも記したが4年生の安藤郁真が昨年の松涛杯を制して世界一となった協会指導員、指定の椎名勝利選手を予選の選定形で誰の目にも分かるほどの大差で退けて決勝に進み見事な雲手でベスト8に入賞したのは快挙である。

快挙:2
女史団体の組手は学生を主に一般も加わったかたちで行われる。
プログラムの組み合わせ表左側に1番の駒澤大学そして大正大OGの鴨空会。
右側の主力チームとしては先の奥家の決勝相手藤原を含む下馬評でも最右翼と目される大正大学と国士舘大学、それに峻空会の誇る末次、水野、太田等のチーム峻空会。
快挙は早々と起こった。
峻空会の二回戦、何度も書くが下馬評最右翼の大正大戦に立ち向かった面々は先方こそ破れはしたが次峰の水野、大将の末次が見事な勝利を収め会場を沸かせた。
惜しくも準々決勝で国士舘に敗れはしたものの見事な戦いぶりで大会一の快挙と言えよう。
勝った国士舘を決勝戦で妹分の学生チームがこれまた見事に撃破して姉の敵を討つ格好となった。

三位の
杉山選手
(手前)
快挙:3
快挙の3番目は個人組手の杉山俊輔
一昨年二位を勝ち取りながら昨年は指定から外れた杉山は、学生たちの兄貴分として毎日の稽古に励み捲土重来を期していた。
初戦を不戦勝で収めたものの二回戦には拓大OBの指定選手リチャード・ヘセルトン選手。
外人特有の体の強さを持つ相手を延長戦の末に打ち負かし、次の準々決勝ではこれまた協会指導員で指定の大隈選手対戦となったが余裕を持って勝ち進んだ。
準決勝はこれまた指定の尾形選手、最初の技ありを奪いながらその後僅差で敗れはしたが堂々の三位で来年度の指定枠を奪回し大きな夢を残してくれた。




生の部の活躍ぶりは言うまでもないが素晴らしく、ここに戦果を報告しましょう。
男子は組手 形 総合優勝で内閣総理大臣杯を獲得。
組手 順調に勝ち進んで迎えた準決勝の大正大戦はこの日一番の気迫溢れた力強い攻撃に徹し5対0の完勝を収め、常にこの戦いぶりを発揮したときに学連の全日本も見えてくる勢いがあった。
続く決勝戦もその勢いを持ち越し国士舘大を4対1で撃破、形とあわせて完全な優勝を収めた。
女子も組手優勝 対国士館大2対1  形二位の総合優勝で飾った。

女子組手チーム優勝の瞬間
(提供:駒大スポーツ
女子形チーム
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以上第48回全国空手道選手権大会に於ける駒澤勢の活躍ぶりを報告いたしました。
OB,OGの皆様には多数の応援を頂き誠にありがとうございました、選手諸君には益々の精進に励まれ来年度も今年に勝る成果を挙げられるよう期待いたします。

尚、明年2006年は第10回の松涛杯世界大会が高橋俊介指導員の指導先オーストラリアにて行われます。
この大会には前チャンピオンの奥家選手も出場する事と期待いたし、その時は例年の峻空会の旅行を応援ツアー当てて一人でも多くの参加を頂きオーストラリアに乗り込む事を計画を立てております。
時期的には来年の8月中旬と聞いておりますので今から諸拳の計画の中に入れていただければ幸いです、詳細は後日改めましてお知らせいたします。
第48回全国空手選手権大会 完 N,Y
駒澤大学空手道部 峻空会
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